2013年 12月 19日
製薬企業に影をおとす欧州経済 |
「経済破綻国家と医療危機」http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/2573182/や「経済危機と医療:ギリシアの医療制度が破局の瀬戸際」http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/2411905/
で書いたように経済危機のあと、各国は医療費への支出を抑える方向に走りました。
日本は幸いにも?医療費については歳出削減はありましたが、それが国民の健康に直結するため、そこまで緊縮とはなっていませんでした。
さて、欧州経済危機のあと、ドイツでもかなり厳しいことになっているようです。元は「AstraZeneca And Bristol-Myers Pull Diabetes Drug From Germany Over Pricing Decision」という製薬企業向けのニュースですが、当方が翻訳しました。
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アストラゼネカ社とブリストル·マイヤーズ社は、価格設定の決定より、ドイツ市場から新規糖尿病薬を引き上げた
Pharmalive.com 2013年12月16日
またもや、製薬会社は、薬価をめぐってドイツ当局との対決中です。 今回の騒ぎは、アストラゼネカ社とブリストル·マイヤーズスクイブ社が、1年前にEU諸国で承認された糖尿病治療薬のForxigaの薬価をめぐって対立で市場から撤退しました。ただし声明によると、仲裁の後には、この決定を再考するとのことでした。
特に、ドイツ共同連邦委員会が SGLT-2阻害薬について「追加の利益が認められない(no additional benefit)」とする評価が出されたため、
、製薬企業は健康保険基金協会との合意に達することができず、こうした動きを見せた。
偶然にも先週末にアメリカ合衆国のFDAの合同パネルでは、この薬剤の販売承認を勧告しました。
この決定は、医薬品の価格設定において、資金繰りが苦しい、欧州各国の政府と製薬業界の間で継続的な緊張を反映している。
この問題ではイギリスにおいてこの緊張がずっと続いており、イギリス国内において製薬企業は定期的に規制当局が保険償還の決定する時に厳しすぎるため、最終的には新薬開発に影響が出る可能性があると述べています。
この対立はドイツにても再現されており、2年前からドイツ連邦政府は、既存の薬と新薬の利点について比較を開始しており、保険者に対して価格交渉権を与えました。これにより製薬企業はうんざりさせられています。これによってイーライリリー社とベーリンガーインゲルハイム社は糖尿病薬Trajenta(トラゼンタ DPP-4阻害薬)をドイツ国内で販売するのを取りやめる決定をしました。
そして7か月前には、ドイツ連邦合同委員会が既存のGSK社のLamictaと比較してエーザイが部分てんかんのファーストインクラスの治療薬Fycompaの非承認を決定したため、Fycompaの配給を一時的に中止しました。
エーザイ社は、規制当局の決定に対して「愕然」としたとして主張しました。
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従来から医薬品の経済性と有効性について評価していたのはNICEのあるイギリスだけだったのですが、これが広がっているようです。
ドイツも医療の質と経済性を分析する機関(IQWIG)が04年に設立され医療費抑制を強めています、ベーリンガーなんて地元ですから驚きです。
いずれにせよこれまでの「新薬=高薬価」が保障されなくなって、いよいよ新薬メーカーも厳しいことになってきているようです。
by skyteam2007
| 2013-12-19 07:30