2014年 08月 09日
逆メディカルツーリズム:台湾の名医を吸い上げる中国 |
日本の政府はイノベーションで海外から患者さんを集めようとしていますが、
すでに中国が医師を台湾から吸い上げているようです。
この動きは言語の壁が低い中華系だと簡単です。また患者さんにとって渡航
にともなうさまざまなリスク(移動中の体調不良や健康保険の支払い、術後の
合併症など)を減らす作用があります。
また、国の規制が異なる中、いわゆる自由診療部門であれば、比較的患者さ
んが支払いに納得できれば、患者さんの移動より医師の移動の方がはるかに
可能性が高い。
そういう意味では、日本の医師が海外で診療にあたったり治療を行う可能性
はあるかもしれません。(現在、行っているのは生体肝移植や心臓カテーテル手
術、脳腫瘍の鍵穴手術など限られていますが、それぞれ著明な医師は海外に
渡航されています)
継続的にこれを行うには医師に対して金銭的に補償が必要で、高額な医療費
を支払え、かつまた高度な医療の需要が高まっている国となると中国に可能性
が見出せます。
現在、中国に進出している日本の医療機関は大半が検診と組み合わせたクリ
ニックが多く、治療の対象は現地に住む日本人だけだったりします。
唯一例外は鹿児島県の米盛病院で、リハビリ技術や治療を行うために大学
病院と提携しています。
今後、こういった動きが加熱する可能性はあると考えます。一方、国際的に
見てもメディカルツーリズムは国民皆保険が完備している国から出て行く場合
はその国の医療制度の穴(英国だと緊急手術の体制)がある場合、あるいは特定
の規制(スイスにおけるデスツーリズム)などが関係しています。
米盛病院では2011年から中国北京市の首都医科大学附属総合病院と医療提携を行っています。月に一度訪中し外来診察、中国人医師に人工関節手術指導を行う等の医学交流から発展し2012年4月、中国外国人医師免許の取得を機に活動の幅が広がりました。医療の国際化といった国家成長戦略の動きの中、当院はいち早く海外医療施設に活動拠点をもちこれまでのメディカルツーリズムの問題点の一部を補完するまで発展してきました。北京で診察をした患者様が私たちの病院で人工関節手術を受け帰国、引き続き北京の病院で術後入院治療を受けられるといった当院独自のシステムは、国際医療における新しいモデルケースです。
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人民日報海外版日本月刊 2014/05/27 11:02:50
http://jp.jnocnews.jp/news/show.aspx?id=53947
大陸の病院が高額で台湾の医師をヘッドハンティング
台湾と大陸の医療資源は偏在している。大陸の医師は1日中多忙なのに対し、台湾の医師は比較的暇である。かくして、週末になると台湾から一群の“休日執刀医”がやって来て大陸の各地で診察・執刀を行い、人民元の札束を手にする。
大陸の病院では、心臓カテーテル、腎移植、整形外科などで多くの医療スタッフを急ぎ必要としており、高額で台湾の医師をヘッドハンティングする。
最近台湾のメディアが、大陸の某病院が1億台湾ドル(約3億4000万円)で、台湾の心臓移植の権威である振興医院心臓医学センターの魏?主任をヘッドハンティングしようとしていると報道した。島内のメディアが確かめたところ、魏?氏は噂は否定したが、ここ数年、大陸の複数の病院から次々と接触があったがすべて断ったことを認め、同時に、台湾医学界の人材が秘かに大陸に移っていることへの懸念を示した。
「国際医療センターが台湾の非常勤専門医を募集」、「上海自由貿易試験区が産業医を募集」……。ここ数年、大陸は台湾の医師免許を承認している。台湾の医師は申請後チャンスがあれば大陸で医療行為を行い、多くの医療機関が高額で台湾の医師をヘッドハンティングしている。ある台湾の医師は、週末に電話をして医師仲間で会おうと思っても、みな大陸で忙しく働いていますとこぼす。
魏?氏は、台湾の医師が大陸へ流れるのは、台湾の医療制度と健康保険制度が関係していると語る。
“休日執刀医”でも大陸では多く稼げる
台湾医学界の現状について、魏?氏は、当局は「管理ばかりして何もしない」と言う。怒りを覚えるのは、衛生行政部門が医師に倫理の授業を課し、単位が足りなければ医師免許の取り消しを要求していることだ。「倫理の授業を受けさえすれば倫理が身に付くとでもいうのですか?」と魏?氏は反論する。
知るところによると、名医の場合1回の診察の報酬は、台湾では8000台湾ドル(約2万7000円)だが、大陸だと5万台湾ドル(約17万円)だという。近年、多くの台湾人医師が大陸で多額の人民元を手にしており、医学界の長老は、台湾の医療環境を改善しなければ人材を留めておくことはできないと嘆く。
報道によれば、健康保険制度の影響で、多くの台湾の医師が賃金の低さと仕事の過酷さを感じている。台湾小区医院協会の謝武吉理事長によれば、現在、週末になると50~60名の医師が大陸に執刀・診察に赴くと言う。高雄医学大学産婦人科の鄭丞傑教授はかつて15カ月間大陸に滞在し、ある台湾資本の病院の副院長を務めた。鄭教授によると、台湾の医師は大陸で週末働くだけで十数万台湾ドルの収入になり、これは大きな魅力である。大陸で仕事をすれば、賃金の平均上げ幅25~50%で、若手医師なら倍にもなるという。
記者の知る元台湾大学病院の皮膚科の医師は、後に大陸のある市立病院に院長としてヘッドハンティングされた。彼は毎月上海に赴き整形手術を執刀している。具体的な収入は口にしないが、高額であることは間違いない。彼も大陸の市場は大きな魅力だと話す。台湾中国医薬大学生殖医学センターの張帆主任也も“休日執刀医”の一人だ。3、4週間に一度は大陸に行き、一度の診察で5000元~1万元(約8万1800円~16万3600円)の報酬を得ている。二重まぶたの手術は、台湾では1万台湾ドル(約3万4000円)ほどであるが、大陸だと3万台湾ドル(約10万2000円)に跳ね上がる。
台湾から大陸に赴く医師は、主に美容整形、形成外科が多数を占め、その他に外科、整形外科、産婦人科、眼科、重症患者担当医などである。また、腎移植、心臓カテーテル、整形外科手術等は、術後のケアが比較的楽なため、1日に数人の患者を集中的に手配しておけば、“休日執刀医”にとって都合がいい。
懸念される台湾医学界の5年後10年後
台湾の心臓移植の権威で亜東医院の朱樹勲院長は指摘する。「当局は早急に一連の措置をとらなければ、人材の流出は食い止められません。島内の医療政策を緩和し、病院に自費医療・国際医療を可能にさせ、健全な医療環境を構築しなければ人材の確保はできないでしょう」。
「台湾に留まっていただき、魏?教授には感謝いたします」と、台湾衛生福利部の李偉強医事司長は率直に語った。現在、台湾の病院の収入の9割は健保からで、大陸の医師のような報酬は到底出せない。人材というものは奪ってでも欲しいものだ。李医事司長も優秀な台湾の医師が大陸にもっていかれることを懸念している。「衛生福利部は現在、『国際医療専区』の設置を積極的に進め、海外からの患者の取り込みを図っています。これも優秀な医師を留めるためです」。
ここ10年、台湾人医師4万人の収入にほとんど変化はない。大陸の病院が高給を出すとなれば、確かに大きな魅力である。週末ごとに台湾の医師たちが大陸へ出稼ぎに行くことに関して「今のところ台湾全体の医療の質に大きな影響は出ていませんが、このまま医療環境の改善が成されないのであれば、5年後10年後はどうなるかわかりません」と李氏は懸念している。
情報元:人民日報海外版日本月刊
by skyteam2007
| 2014-08-09 13:04
| 医療