2007年 01月 05日
[加熱する消耗戦]地方でも都市でも |
根本的に「医師の偏在」「看護師争奪戦」というキーワードのみで、現在の状況を語る報道機関は勉強不足ではないか‥と言いたい。今、医療現場で医師や看護師が過不足なく、配置できている所はほとんどない。そして採算がほとんど取れない地域病院にとって今回の人手の取り合いは、「生き残り」のための消耗戦のように映る。
山陰両県で看護師の争奪戦が起こっている。昨年四月から看護師を多く配置すれば、病院の収入源となる診療報酬が増えるようになったためだ。競争は全国に広がり、大病院が大量募集に走る一方で、中山間地域の中小病院は確保に苦労している。地方の看護師不足に拍車がかかる懸念もあり、看護体制充実をうたった制度改定は「もろ刃の剣」となって、地方の医療を脅かしている。
患者さんや看護師さんが求める1:7看護水準で配置されている大学病院でさえ、医師は不足しているか、ほとんど雑用係で、実際に診療行為以外に借り出されて、どこに余裕があるというのだろうか?これは第二次世界大戦のインパール作戦と同じで兵站が切れた状態で頑張れ頑張れという精神論と同じじゃないかと思うのですが。
国は医療について「無駄遣い」と決め付け、出し渋り、国民は「気軽にかかれる専門医の診療」を求め、あたかもエコノミークラスの料金でファーストクラス並みのサービスがいつでも受けられる‥というのは全く問題が異なる。実態として、救急車でかけつける患者の5割は翌日でも間に合うか、即日帰れるような軽症者が大半を占め、残りの5割とて入院になるのは少ない。現場の医療従事者の過労死寸前の勤務状況に対して「国民や政府は最低の報酬」で応えている。一旦焼け野原になってしまえば、こういう状況は改善するはずであり、結局、アメリカ型の市場原理導入も間近なのかもしれない。 それは、逆にいうと、お金がない人は満足に受診することはできないという、格差を是認した小泉路線の行き着く先なのだが、これを国民は求めているのだろうか?ぽち→
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両県で看護師争奪戦
山陰両県で看護師の争奪戦が起こっている。昨年四月から看護師を多く配置すれば、病院の収入源となる診療報酬が増えるようになったためだ。競争は全国に広がり、大病院が大量募集に走る一方で、中山間地域の中小病院は確保に苦労している。地方の看護師不足に拍車がかかる懸念もあり、看護体制充実をうたった制度改定は「もろ刃の剣」となって、地方の医療を脅かしている。
昨年六月、島根県立看護短大(出雲市)に、県外の国立大付属病院が募集説明に訪れた。担当者は「今までは島根大に遠慮していたが、今回は来させていただいた」とあいさつ。仁義なき戦いの幕開けだった。
鳥取大医学部付属病院(米子市)は二年がかりで百二十人規模の採用を計画。松江赤十字病院(松江市)は来年度の採用を例年より二十人程度上乗せして五十人に、島根大医学部付属病院(出雲市)も前年比五十人増の八十人の採用を目指す。
鳥取大病院の石部裕一院長は「重症患者、高度治療が求められる患者が多く、もともと看護師は不足していた」とし、看護師を増やしても人件費がまかなえるめどが付いた今回の診療報酬改定を歓迎する。
診療報酬は、看護職員一人あたりの患者数が少ないほど段階的に報酬が多くなる。診療報酬改定では、従来最も高い報酬を得られていた患者十人(十対一)よりも手厚い、七人(七対一)の水準が新設された。
島根県立看護短大には既に東京大や京都大、都会地の民間大病院が相次いで押しかけて募集要項を配布。研修の強化や敷地内に無料マンションを用意するなど処遇面の充実を強調する病院もあるいう。
山陰の各病院も確保に懸命だ。鳥大病院は二つも対策本部を設置し、県外行脚で県出身者の呼び込みを狙い、島大病院もボーナスとは別に年間二十五万円の特別賞与を上乗せ支給する制度を新設。
松江赤十字は、院内保育所の開設時間延長などの子育て支援強化で離職防止や潜在看護師の掘り起こしを図り、配置換えも駆使して、一足早く「七対一」を達成した。
対照的に、八人の募集に対し応募がゼロだったのは、島根、岡山、広島三県境に立地する日南病院(鳥取県日南町)。「診療報酬改定の影響はあった。交通アクセスが悪く人材が集まりにくい山間地の病院は今後苦しくなる」と昨年度もゼロだっただけに不安顔だ。
一方、松江市立(同市)や島根県立中央(出雲市)などの自治体病院は、定員の増減に手間と時間がかかるため、来年度の対応が難しいという。
山陰での看護師不足は慢性的で、島根県では二〇〇六年に二百十七人、〇七年に二百五十一人の不足が見込まれながら、県内の大学・短大・専門学校で養成した看護師の半数近くが県外に流出している。
〇四年スタートの新臨床研修制度では、都市部の有力病院に研修医が集中、地方の医療機関の医師不足に拍車が掛かった。今回の改定で今度は看護師の流出が加速する恐れも指摘されており、島根県医療対策課は制度改定が地域医療に与える影響を懸念。一月に看護師の養成・確保のための検討委員会を新たに発足させ、独自調査で実態を把握した上で県として対策を打ち出す。
(山陰中央新報'07/01/05)
島根県、232人の医師不足
▽山間部・県西部で深刻
医師不足に悩む島根県は二十一日、県内すべての病院と診療所計九十九施設を対象にした、勤務医師の実態調査をまとめた。現行の診療体制で来春に必要な人数は計千百五十一人で、不足数は約二割に当たる二百三十二人。充足率が低いのは、中山間地域を抱える医療圏で、診療科別では産婦人科、小児科など。医師の地域、診療科偏在が浮き彫りになった。
調査は、医師不足の実態を把握するため初めて実施。対象は病床数二十床以上の公的、民間病院六十一施設と公立診療所三十八施設。非常勤医師は勤務時間によって常勤医師の人数に換算した。
県内七つある二次医療圏別で、もっとも充足率が高かったのが松江で85・5%。出雲(81・7%)、隠岐(80・1%)と続く。最も低かったのが雲南で72・8%。浜田や益田、大田も全県の充足率79・9%を下回り、山間部や県西部での医師不足が目立つ。
不足する二百三十二人のうち、公的病院や公立診療所、地域医療拠点病院での不足数が七割弱の百五十三人を占める。
診療科別では、最も充足率が低かったのは皮膚科の50・0%。全国的に医師不足が深刻な産婦人科は78・2%、麻酔科71・6%、小児科は74・3%だった。
県医師確保対策室は「深刻な医師不足の実態が裏付けられた。引き続き医師確保に努力するが、県独自での解決は難しく、医師の供給体制について制度的な見直しを国に働き掛けたい」としている。(城戸収)
中国新聞2006/12/26
by skyteam2007
| 2007-01-05 18:08
| 医療